疾患の説明
緑内障の視野
  緑内障は視野が障害される病気です。
視野障害はどう自覚されるのでしょうか?
生まれつき頭の後ろが見えないことを気にする人はいません、実は視野障害はぼやけて見えたり、影が見えたりするわけではなく、頭の後ろが見えないのと同じで見えなくなったことを自覚するのはとても難しいのです。
 
しかも、視野障害は左右対称に起こることが多く、左右の眼で見えないところを補い合い、また、中心視野は後期まで保たれる場合がほとんどで、中心視野が残っていれば視力は良好に保たれます。
 
いい意味では多少視野障害があっても生活に支障はありません。悪い意味ではよっぽどひどい視野障害になってはじめて気づくため眼科を受診するころにはかなり進行した緑内障になっている場合が多いです。
検診などで、眼底所見から緑内障を疑われた場合は、是非眼科で精密検査を受けられてください。
治療方針
 
現時点で緑内障に有効な治療法は眼圧を下げることだけです。いろいろな薬剤の、神経保護作用や、血流改善作用といったアプローチもなされてはいますが、今のところ明らかに有意に緑内障の視野障害の進行抑制に有意といわれているのは、眼圧下降のみです。
 
眼圧には日内変動があり、この眼圧日内変動は時計遺伝子によって制御されていることが分かっています。日によっても、時間によっても眼圧が異なることがあるので、3回ほど別の日で眼圧を測定し眼圧のベースラインを決め、そこから2〜3割下の眼圧を目標眼圧として、治療を始めます。
 
視野障害の進行はきわめてゆっくりですので、半年から1年に一度検査して、現在の眼圧で視野の進行が抑制されていることを確認する必要があります。もし、進行しているようであれば目標眼圧をさらに低いものにして、コントロールしてゆく必要があります。
手術が必要になったら
  閉塞隅角緑内障の方については白内障手術をすることで、閉塞した隅角を広げることができ治癒の可能性が高いです。しかしながら、隅角癒着を起こしていたりして、白内障手術を行っても眼圧が十分に下がらない場合は薬物療法や他の緑内障手術が必要な場合もあります。
 
緑内障の手術は、眼の中の水を眼外に流出させる部分を再建する手術と、新たに流出路を作る手術がありますが、どちらも眼圧を下げる手術であって、悪くなった視野をよくすることは出来ません。手術をした眼は、単なる結膜炎になっても眼内炎を合併して失明する危険性がありますので、眼科医としてはなるべく緑内障の手術は行いたくないのが本音です。
 
薬物療法や選択的線維柱帯光凝固術(SLT)などで十分な眼圧降下が得られず、失明を予防する上でやむを得ない場合にのみ手術をおすすめいたします。
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